家づくりコラム
2023年01月21日
住宅におけるQ値とは?計算方法や推奨値を詳しく解説
住宅におけるQ値(熱損失係数)とは、「熱量の室外への逃げやすさ」を示した数値です。数値が小さければ断熱性が高く、その反対に大きければ断熱性が低いことを示しています。
高気密高断熱住宅が気になる方は、本記事でQ値の計算方法や推奨値を理解しておきましょう。
目次
Q値とは
高気密高断熱住宅のその他の値との違い
UA値
C値
高気密高断熱住宅の値の計算方法
Q値の算出方法
UA値の算出方法
C値の算出方法
快適に暮らせる住宅の基準値
Q値の推奨値
UA値の推奨値
C値の推奨値
高気密高断熱住宅の値の推奨値を理解しよう
Q値とは
Q値とは、熱損失係数のことです。Q値の「Q」は、英語の「Quantity」(量)から来ています。
Q値は具体的に、「熱量の室外への逃げやすさ」の数値です。数値は、室内外の温度差が1度のときに、家全体から床面積1平方メートルあたりに1時間で逃げ出す熱量がどれくらいかを示しています。
そのため、Q値の数値が小さければ断熱性能が高く、数値が大きければ断熱性能が低いです。
高気密高断熱住宅のその他の値との違い
Q値は、高気密高断熱住宅を判断する際に欠かせないません。高気密高断熱住宅とは、隙間を減らして断熱性能を高めることにより、夏は涼しく、冬は暖かい室温を保つ住宅です。
Q値以外にも、UA値やC値が高気密断熱住宅に用いられます。ここから、高気密高断熱住宅におけるQ値とUA値やC値の違いを確認していきましょう。
UA値
UA値とは、外皮平均熱貫流率のことで、Q値と同様に「熱量の室外への逃げやすさ」の数値です。具体的に、室内外の温度差が1度のときに、家全体で外皮面積1平方メートルあたりで、どれくらいの熱が逃げるかを示しています。
外皮とは、屋根・天井・壁・開口部・床・土間床・基礎など熱的境界となる部分です。Q値が建物の延べ床面積を元にするのに対し、UA値は外皮面積を元に計算する点が異なります。
なお、UA値の数値が小さければ断熱性能が高く、数値が大きければ断熱性能が低いです。
C値
C値とは、隙間相当面積のことで、「隙間の程度(気密性)」の数値です。具体的に、家の大きさ(延床面積)に対してどれくらいの隙間があるかを示しています。
C値が小さければ隙間が小さく(気密性が高く)、大きければ隙間が大きい(気密性が低い)です。Q値やUA値が断熱性を示した数値であるのに対し、C値は気密性を示す数値である点が異なります。
C値を測定するには、専門の気密測定試験機が必要です。
高気密高断熱住宅の値の計算方法
Q値・UA値・C値を意識しておけば、高気密高断熱住宅のマイホームを建てて快適に暮らせるでしょう。国や各ハウスメーカーでは、それぞれの推奨値を設定しています。
各指標がどのように算出されているか自分で理解できるように、まずは具体的な数値を用いてQ値・UA値・C値の計算方法を確認しておきましょう。
Q値の算出方法
Q値の算出方法は、以下のとおりです。屋外に漏れる温度あたりの熱損失量を床面積で割って算出します。
Q値(W/㎡・K) = 総熱損失量(W/K) ÷ 延床面積(㎡)
住宅の総熱損失量が240W/K、延床面積120㎡のケースで計算してみましょう。240÷120=2であるため、Q値は2となります。
関連して、熱損失量の計算式は、以下のとおりです。
熱損失量 = 面積(周長) × 熱貫流率(線熱貫流率) × 温度差係数
求める部位によって、少し計算方法が異なります。
UA値の算出方法
UA値の算出方法は、以下のとおりです。外皮を経由して外部に逃げる熱量を外皮面積全体で平均します。
UA値(W/㎡・K) = 総熱損失量(W/K) ÷ 外皮面積(㎡)
外皮面積で主に対象となるのは、外壁・屋根・窓・ドアなどです。今回は、住宅の総熱損失量が240W/K、外皮面積280㎡のケースで計算してみましょう。240÷280≒0.85であるため、Q値は約0.85W/㎡・Kです。
なお、建築研究所等のHPで公開されている外皮性能計算シートを用いれば、より計算しやすいです。
参考:一般財団法人住宅・建築 SDGs 推進センター 省エネサポートセンター「住宅に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム」
C値の算出方法
C値の算出方法は、以下のとおりです。各隙間の面積を合計し、住宅の延床面積で割って算出します。
C値(c㎡/㎡) = 住宅全体の隙間の合計(c㎡) ÷ 延床面積(㎡)
今回は、延床面積が120㎡と仮定して計算してみましょう。
総隙間面積が600c㎡の場合、600÷120=5であるため、C値は5c㎡/㎡です。また、気密性が高く総隙間面積が240c㎡の場合、C値は2c㎡/㎡(240÷120=2)になります。
快適に暮らせる住宅の基準値
Q値・UA値・C値を確認しただけでは、高気密高断熱住宅として十分なのか判断できません。そこで、快適に暮らせる住宅の基準値を把握することが大切です。
ただし、快適な数値は地域によって異なります。たとえば、2022年1月の東京の平均気温が4.9℃であるのに対し、同時期の札幌は8℃以上も低い気温(-3.2℃)でした。
札幌で快適に過ごすためには、住宅に高い気密性や断熱性が必要です。マイホームを建てる際には、より厳しめに数値をチェックするようにしましょう。
ここから、Q値・UA値・C値の推奨値をそれぞれ解説していきます。
Q値の推奨値
もともと省エネルギー基準の「平成11年基準」では、性能規定の判断基準としてQ値(熱損失係数)が用いられていました。しかし、2016年に省エネルギー基準が改正されて(平成28年基準)以降、代わりにUA値が採用されため、現在では国によるQ値の明確な基準を確認できません。
明確な基準はありませんが、1.6〜1.0W/㎡・Kであれば、比較的高い断熱性能があるといえるでしょう。一般的に、各ハウスメーカーのQ値は、2.7〜1.0W/㎡・Kの範囲内にあります。
なお、Q値では床面積によって数値にバラツキが出てしまう点が、省エネルギー基準改正でUA値が採用されるようになった主な理由です。
UA値の推奨値
UA値を判断する際、省エネルギー基準の基準値がひとつの参考指標となります。UA値の基準値は以下のとおりです。
地域によって、UA値の推奨値が異なります。一般的に、北の地域ほど、地域区分の数字が小さいです。
北海道の地域区分は、1と2が該当します。札幌の地域区分は「2」で、UA値の基準値は0.46W/㎡・Kです。
つまり、札幌で快適に暮らすには、UA値0.46W/㎡・Kの物件を選ばなければなりません。
参考:一般社団法人 住宅・建築SDGs 推進センター「住宅の省エネルギー基準」
C値の推奨値
C値も、もともと省エネルギー基準の指標でしたが、2009年の法律改正に伴い基準が撤廃されました。完成後に計測しなければ数値が測れない点が、省エネルギー基準でC値を採用しなくなった理由のひとつです。
そのため、C値の推奨値として国の基準で参考にできるものはありません。各ハウスメーカーでは、1.0c㎡/㎡を基準として定めることが一般的です。
また、札幌で冬を快適に過ごすのであれば、1.0c㎡/㎡未満であることが理想でしょう。
高気密高断熱住宅の値の推奨値を理解しよう
Q値(熱損失係数)・UA値(外皮平均熱貫流率)・C値(隙間相当面積)を意識すれば、夏は涼しく冬は暖かい高気密高断熱住宅で暮らせます。とくに札幌は、日本の他地域と比べて冬の気温が低いため、各値の数値がより低いことが重要です。
マイホームを購入する際は、各推奨値と比べて対象物件の数値はどうなのかをチェックするようにしましょう。
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